公益財団法人の主たる目的である業務に関連する寄付は、個人の所得税の「所得控除」の対象です。 さらに、税額控除の証明を受けた法人への対象寄付なら、「税額控除」も選べます。公益財団法人という名称だけで、税額控除まで使えるとは限りません。 確認する順番は、寄付先の資格、使える控除、申告書類の3つです。この記事では、証明書の見方から金額の比較、申告の記入例までを解説します。会社から寄付する場合の損金算入も、個人の控除と分けて紹介します。 公益財団法人への寄付は、どの控除の対象になる? 個人の寄付では、まず所得税の所得控除が使えるかを確認し、税額控除の証明があれば両方式を比較します。住民税の控除には、住所地の自治体による指定が別に必要です。 控除の見取り図「公益認定」と「税額控除の証明」を分けて確認 01公益財団法人への対象寄付法人の主たる目的である業務に関連する寄付 所得控除の対象02税額控除の証明もあるその寄付に適用できる証明書を確認 所得控除・税額控除から選択住民税は住所地の条例指定を別に確認。会社の寄付は法人税の損金算入で判断します。 所得控除の対象条件と、税額控除に必要な証明書 公益財団法人は、税法上の「特定公益増進法人」に含まれます。これは、教育や科学、文化、社会福祉など、公益の増進に大きく貢献する一定の法人を指す区分です。 ただし、控除対象になるのは、その法人の主たる目的である業務に関連する寄付です。寄付者に特別の利益が及ぶもの、入学に関係する寄付、出資の業務に使うことが明らかな寄付などは対象から除かれます。 セミナー参加料や物品購入代金などの対価も、寄付と同じには扱えません。 税額控除には、運営・事業活動や市民からの支援について追加の要件があります。公益認定の書類だけで判断せず、「税額控除に係る証明書」を確かめてください。 出典:国税庁「寄附金控除」、「公益社団法人等に寄附をしたとき」 一般財団法人・公益社団法人との違い 寄付先の区分 | 個人の所得控除 | 個人の税額控除 | 公益財団法人・公益社団法人 | 主たる目的の業務に関連する対象寄付に適用 | 税額控除の証明などの要件を満たす対象寄付に適用 | 一般財団法人・一般社団法人 | その法人格だけでは対象にならない | その法人格だけでは対象にならない | ※ 横幅のある表は、スマートフォンでは左右に動かして読めます。 一般財団法人でも、個別の寄付が財務大臣の指定を受けた「指定寄附金」などに当たる場合は、所得控除の対象になり得ます。「財団だから対象」「一般財団だからすべて対象外」と決めず、募集している寄付の区分を確認しましょう。 出典:内閣府「公益法人・NPO法人の税制の比較」、国税庁「特定寄附金の範囲」 対象法人と税額控除の証明書は、どこで確認する? 法人名、証明書、寄付日を照合すると、名称だけによる取り違えを防げます。 「公益財団法人」と、似た名前の一般財団法人や株式会社は別の法人です。申込先だけでなく、領収書を発行する法人名まで確かめてください。 1正式な法人名を調べる内閣府の「公益法人information」で法人名を検索。公益法人かどうかを確認し、税額控除の対象情報も調べます。 2「税額控除に係る証明書」を開く寄付先の税制案内・公開資料にある証明書で、法人名と発行日、有効期間を確認します。申告に使う写しは、寄付先の公式サイトや窓口を通じて交付を受けます。 3寄付する日に適用できるか照合する現在の対象資格だけでなく、実際の寄付日に有効な証明かを確認。過去の寄付を申告するときも同じです。 公益法人informationで法人を調べる 国税庁が示す税額控除の書類要件は、寄付を支出する日以前5年以内に発行された証明書の写しです。基準は、申告する日ではなく寄付した日です。申告時点で有効期間が過ぎていても、寄付した日に要件を満たす証明書なら使えます。寄付日より後に発行された証明書では、その寄付にさかのぼって適用できません。 2種類の書類は、証明する内容が違います寄付金受領証明書(領収書)誰が、いつ、いくら、その法人に寄付したか。税額控除に係る証明書の写し寄付先が、税額控除の対象となる資格を持つか。税額控除では、領収書だけでなく後者も必要です。 出典:国税庁 No.1266「手続き」 所得控除と税額控除では、いくら税金が減る? 所得控除は「税率をかける前の所得」を減らし、税額控除は「計算した税額」を直接減らします。所得控除額と、実際に減る税額は同じではありません。 税額控除の対象寄付なら、両方の方法で計算して比べます。 5万円の寄付を比較する(課税所得300万円の例) 次の例は、総所得金額等400万円、寄付金控除前の課税所得300万円の場合です。他の寄付や税額控除はなく、所得は総合課税とします。 年間の対象寄付額 | 所得控除で減る所得税本体 | 税額控除で減る所得税本体 | 10,000円 | 800円 | 3,200円 | 50,000円 | 4,800円 | 19,200円 | 100,000円 | 9,800円 | 39,200円 | 5万円の場合、所得控除は所得から48,000円を差し引き、この例の税率10%で4,800円の減税になります。税額控除は48,000円×40%で19,200円です。 表は2026年分の所得税本体の比較で、復興特別所得税と住民税を含みません。振り込まれる還付額を示すものでもありません。還付の有無や金額は、源泉徴収などで既に納めた税額にもよります。 計算式と2つの上限 ほかの寄付がない場合所得から引くか、税額から引くか 所得控除対象寄付額と総所得金額等の40%のいずれか少ない額 − 2,000円 この金額を所得から差し引いて、税額を再計算します。税額控除(対象寄付額 − 2,000円)× 40% 対象寄付額は総所得金額等の40%まで。控除額は所得税額の25%が上限です。 2,000円を引いて0以下になるときの控除額は0円です。税額控除の計算額と上限額は、100円未満を切り捨てます。「総所得金額等」は給与の年収や手取り額とは異なり、給与所得控除などを差し引いた所得を基にする金額です。 税額控除が常に有利とは限らない 税額控除には所得税額の25%という上限があるため、寄付額が大きい場合などには所得控除が上回ります。 上限で逆転する例課税所得150万円の人が、50万円を寄付すると 所得控除で減る所得税本体24,900円(500,000円−2,000円)×5% 税額控除で減る所得税本体18,700円所得税75,000円×25%が上限100円未満を切り捨て 総所得金額等250万円、寄付金控除前の課税所得150万円。他の寄付・税額控除なし、総合課税の例。復興特別所得税・住民税は含みません。 この例では、税額控除の算式で計算した199,200円をそのまま引くことはできません。所得控除で減る税額の方が6,200円大きくなります。 税額控除を選べる「公益社団法人等寄附金」は、その年の対象額全体で所得控除か税額控除のどちらかを選びます。 同じ区分の寄付を一部ずつ分けて併用することはできません。ほかの寄付や住宅ローン控除などがある場合も含め、申告時には国税庁の確定申告書等作成コーナーで所得・寄付・控除をすべて入力して確認しましょう。 出典:国税庁「所得税の税率」、「公益社団法人等寄附金特別控除を受けられる方へ」 寄付額や所得別にさらに比較したい方は、寄付による減税額と上限の計算例もご覧ください。 住民税も控除される?住所地の指定を別に確認 所得税の控除対象でも、住民税が自動的に控除されるわけではありません。 寄付した年の翌年1月1日の住所地について、都道府県と市区町村それぞれの条例指定を確認します。 指定する自治体 | 住民税の控除率 | 都道府県 | 4%(政令指定都市に住む場合は2%) | 市区町村 | 6%(政令指定都市は8%) | 両方が指定 | 合計10% | 対象寄付額から2,000円を差し引いた額に、該当する控除率をかけます。対象寄付額の上限は総所得金額等の30%です。たとえば5万円の寄付が両方の指定対象で、ほかの寄付がなく上限内なら、住民税の所得割額の範囲内で、翌年度の住民税が4,800円減ります。 調べるときは、自治体の公式サイトで「自治体名 寄附金税額控除 指定法人」を検索し、寄付先の正式名称と指定の条件を確認してください。一覧に名前が見当たらない場合も、一定の法人をまとめて指定する制度があります。判断できなければ、自治体の住民税担当窓口に確認します。 出典:埼玉県「寄附金税制について」、内閣府「公益法人税制」 確定申告に必要な書類と、記入の進め方 公益財団法人への寄付金控除は、年末調整では受けられません。所得税の控除を受けるには確定申告が必要です。まず、本人の寄付であることと、選んだ控除に応じた書類がそろっているかを確認しましょう。 控除方式で変わる必要書類 所得控除を選ぶ寄付金の領収書金額・受領日と、法人の主たる目的の業務に関連する対象寄付である旨が記載された領収書などを用意します。 税額控除を選ぶ領収書 + 証明書の写し+ 計算明細書寄付者の氏名・住所、寄付先法人名、受領日・金額、主たる目的の業務に関連する寄付である旨が分かる領収書と、税額控除の証明書の写しを用意し、計算明細書を作成します。 公益財団法人の所得控除では、税額控除用の証明書の写しは必要ありません。学校法人など、別の法人区分に求められる証明書と混同しないようにしてください。申告全体では、このほかに源泉徴収票の情報や本人確認に必要なものなどを準備します。 出典:国税庁 No.1150「手続き」、No.1266「手続き」 税額控除を選ぶ場合の記入例 5万円を寄付した例を、国税庁の「公益社団法人等寄附金特別控除額の計算明細書」に当てはめます。条件は前の計算例と同じ、総所得金額等400万円・課税所得300万円、ほかの寄付・税額控除なしです。 5万円を寄付した場合の記入例明細書で計算し、申告書に転記する ①〜⑤寄付額と所得を記入① 対象寄付50,000円② ほかの寄付0円③ 合計50,000円④ 所得金額の合計額4,000,000円⑤ その40%1,600,000円 ⑥〜⑨寄付額から控除候補額を計算⑥ ⑤から②を引く1,600,000円⑦ ①と⑥の少ない方50,000円⑧ 差し引く金額2,000円⑨(50,000円−2,000円)×40%=19,200円 ⑩〜⑫所得税額による上限と比べる⑩ 所得税額202,500円⑪ その25%(100円未満切捨て)50,600円⑫ ⑨と⑪の少ない方19,200円 申告書への転記第一表「政党等寄附金等特別控除(㊱〜㊳)」に19,200円。第二表「特例適用条文等」に「措法41の18の3」と記入します。 第一表の「寄附金控除」欄は所得控除用です。税額控除を選んだ同じ寄付額を、こちらにも重ねて記入しないでください。 寄付先名・寄付日・金額は、計算明細書の「公益社団法人等寄附金の内訳」に記入します。第二表の「寄附金控除に関する事項」は所得控除用なので、税額控除を選ぶ寄付はここにも記入しません。 住民税の指定対象なら、第二表の「住民税・事業税に関する事項」にある「都道府県条例指定寄附」「市区町村条例指定寄附」の該当欄に寄付額を記入します。 出典:国税庁の計算明細書(令和7年分以降用)、記載要領、確定申告の手引き(令和7年分・23ページ)。上図は記入箇所を抜き出した説明用の例です。提出時は国税庁の様式一覧で対象年分を確認してください。 e-Taxなら、添付省略後も書類を保管 国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、所得や寄付の情報を入力して申告書を作成できます。税額控除対象の寄付は、その区分を正しく選びます。 e-Taxでは、領収書や税額控除の証明書に記載された事項を入力・送信することで、これらの添付を省略できます。ただし、原則として法定申告期限から5年間は、税務署から提示・提出を求められることがあるため保管が必要です。 計算明細書など、申告に必要なデータの作成・送信まで不要になるわけではありません。 出典:国税庁 e-Tax「第三者作成書類の添付省略」 申告時期や申告を忘れた場合の手続きは、寄付金控除の申告期限で確認できます。所得税の確定申告をせず、住民税の控除だけを受ける場合は、寄付した年の翌年1月1日の住所地の市区町村への申告が必要です。 領収書の発送時期と名義も、寄付前に確認する 領収書の発送時期は寄付先によって異なります。年末に寄付するときは、どの年分の領収書になるかも寄付先に確認してください。発行時期と申込名義を先に確かめておくと、申告直前の行き違いを防げます。 給付型奨学金への寄付を例にガクシー財団での領収書の受け取り 公益財団法人ガクシー財団では、入金確認後、通常2〜3週間程度で領収書を発送しています。1〜2月はお申し込みが集中し、時間がかかる場合があります。 寄付者のお名前を一般公開しないご希望にも対応しています。ただし、名前を公開しないことと、申告に必要な本人情報を登録しないことは別です。控除を申告する方の氏名・住所を正確にご登録ください。 ガクシー財団は税額控除の証明を取得しています。証明書の写しについては、財団のお問い合わせ窓口へご連絡ください。控除の適用判断に迷う場合は、税務署または税理士に確認できます。 案内:ご寄付について 法人から公益財団法人へ寄付した場合の損金算入 会社の寄付は、個人の「所得控除・税額控除」ではなく、法人税の損金算入で考えます。 公益財団法人の主たる目的である業務に関連する寄付は、特定公益増進法人への寄付として、一般寄付金とは別の限度額があります。個人向けの税額控除の証明がない法人でも、この別枠の対象になり得ます。 特別枠を超えた分は、一般枠に残りがあれば算入 次は、資本を有する普通法人が、12か月の事業年度で計算する場合です。Aは期末の「資本金+資本準備金」、Bは支出した寄付金を損金に算入しないものとして計算した所得金額です。 枠 | 損金算入限度額の計算式 | 特別枠 | (A×0.375%+B×6.25%)×1/2 | 一般枠 | (A×0.25%+B×2.5%)×1/4 | 事業年度が12か月でない場合は、資本金・資本準備金に係る部分を「事業年度の月数÷12」で調整します。会計上の利益をそのままBに当てはめず、税務調整後の計算に必要な金額を用いてください。 たとえばAが1,000万円、Bが500万円で、公益財団法人へ30万円を寄付し、ほかの寄付がない場合は次のとおりです。 30万円を寄付した会社の例損金にできるのは、合計212,500円 特別枠175,000円一般枠37,500円残る87,500円は、この例では損金に算入できません。 損金算入額は、法人税がそのまま減る金額ではありません。また、特別枠は同じ枠を使うほかの寄付と共通で、寄付先ごとに増えるものではありません。 支払日と保存書類にも注意 未払いの寄付は、原則として支払うまで寄付金に含めません。申告には「寄附金の損金算入に関する明細書(別表14(2))」を添付し、寄付が受領法人の主たる目的である業務に関連する旨を証する書類を保存します。広告の対価などを伴う場合は、寄付金に当たるかを別に検討してください。 出典:国税庁「特定公益増進法人に対する寄附金」、「寄附金の範囲と損金不算入額の計算」 公益財団法人への寄付金控除で、よくある質問 Q. ふるさと納税と一緒に使えますか? 使えます。ただし、寄付金控除の総所得金額等の40%の枠は、年内の寄付をまとめて計算します。また、ふるさと納税など所得控除を選ぶ対象寄付が年内に2,000円以上ある場合は、公益社団法人等の税額控除の計算で2,000円を重ねて差し引きません。認定NPO法人等への寄付で税額控除も使う場合、公益社団法人等の税額控除と合わせて所得税額の25%の上限を確認します。 公益財団法人への寄付を確定申告する年は、ふるさと納税のワンストップ特例を申請済みでも、そのふるさと納税分を含めて申告する必要があります。公益財団法人への通常の寄付が、ふるさと納税と同じ実質負担2,000円になるわけではありません。 出典:国税庁「ふるさと納税」、「認定NPO法人に寄附をしたとき」 Q. 家族名義の寄付を、自分の控除にできますか? 本人以外が支払った寄付を、自分の寄付金控除にすることはできません。寄付の申込者・支払者・領収書の名義が食い違う場合は、自己判断で書き換えず、寄付先と税務署に確認してください。 出典:国税庁「妻名義で寄附した場合」 Q. 年金生活者や所得税がかからない人も控除できますか? 年金を受け取っている方も、対象の寄付と課税される所得があれば控除を利用できます。ただし、所得税が0円の場合、所得税から差し引く税額や、その控除による還付は生じません。住民税が課税されている方は、住民税の指定対象になるかと、市区町村への申告を別に確認してください。 出典:国税庁「公的年金等の課税関係」、埼玉県「税の控除を受けるための手続」 Q. 賛助会費も寄付金控除の対象ですか? 「会費」という名前だけでは決まりません。対価性や支出義務がなく、実質的な寄付として対象法人への寄付の要件を満たすかを確認します。施設利用やサービスの対価などを含む場合は扱いが異なるため、受領法人に控除対象の区分と領収書の発行を確認し、税務上の判断に迷う場合は税務署に相談してください。 出典:内閣府「税額控除制度に関する賛助会費の取扱い」 Q. 現金ではなく、不動産や株式を寄付する場合は? 資産の寄付は、現金と同じ計算をそのまま使えません。寄付時に譲渡所得が生じる場合や、一定の非課税承認を要する場合があるため、資産の評価、受入条件、税務手続きを寄付先と税理士に確認してください。 出典:国税庁「公益を目的とする事業を行う法人等に財産を寄附したとき」